偽物みつけた

怖い話

俺がまだ小学4年生だった頃の話だ。夏休みになると、俺たち家族は毎年田舎の祖父母の家に遊びに行っていた。古いけれど広々とした木造の家で、周りは山や川に囲まれていた。俺たち子供にとっては、都会の窮屈な家とは違って自由の象徴みたいな場所だった。

その年も親戚の子供たちが集まって、みんなで遊ぶことになった。夏の夕暮れ時、誰かが「かくれんぼしよう!」と言い出した。子供たちは一斉に賛成の声を上げた。俺たちは家中、そして庭を使ってかくれんぼをすることにした。鬼はじゃんけんで決め、運悪く俺が鬼になることになった。

目隠しをして木の幹に額をつけ、「10、9、8……」と数え始めた。耳をすませると、みんなが笑いながら走り回る音が聞こえた。どこかで障子が開く音もする。「3、2、1!」と数え終わり、俺は目隠しを外して探し始めた。

最初に見つけたのは庭の裏に隠れていた従妹のナオだった。草むらの陰にしゃがみ込んでいたのが丸見えで、簡単だった。次に家の中へ戻ると、茶の間のテーブルの下に隠れていた弟のユウキを見つけた。ユウキは見つかるや否や「もっと隠れる時間ちょうだいよ!」と文句を言いながら出てきた。

順調に見つけていったが、どうしても見つからないのが従弟のタカシだった。タカシは俺と同い年で、かくれんぼが大好きなやつだ。前にやったときも、ものすごく上手に隠れていて、最後まで見つからなかったことがある。今回もきっとどこかに完璧に隠れているのだろうと思った。

「タカシー!出てこいよ!」と何度も叫びながら探した。でもどこにもいない。庭中を歩き回り、家の中もくまなく探したが、それらしい気配はどこにもない。時間が経つにつれて、少しずつ不安になってきた。

「おかしいな……」と思いながら2階に上がった。2階は祖父母が使わなくなった物置部屋が多く、古いタンスや畳まれた布団が無造作に置かれていた。暗い廊下を歩きながら一つ一つ部屋を開けていった。すると、奥の小さな押し入れから何か音がしたような気がした。微かな笑い声――それも、タカシのものだった。

「そこか!」と俺は叫びながら押し入れのふすまを勢いよく開けた。中にはしゃがみ込んでいるタカシがいた。暗闇の中で、俺をじっと見上げている。薄暗い顔に目だけがぼんやりと光っているようで、少し不気味だったけど、俺はホッとして「やっと見つけたぞ!」と声をかけた。

ところがタカシは何も言わない。ただニヤニヤ笑っているだけだった。その笑顔がどこかぎこちなく見えて、背中に寒気が走った。でも「まあ、タカシのことだからふざけてるんだろう」と思い、「ほら、もう終わりだよ」と言って腕を掴んで立たせた。

そのままタカシの腕を引っ張りながら1階に戻った。居間ではみんなが輪になってお菓子を食べていた。俺は「タカシ、見つけたぞ!」と言いながら居間に入った瞬間、足が止まった。居間の端で、タカシが普通に座ってお菓子を食べていたのだ。

目の前のタカシを見て俺は言葉を失った。目の前でお菓子を食べているタカシと、さっきまで俺が手を引いていた「タカシ」。頭の中でぐるぐると思考が回り、混乱が頂点に達した時、急に自分の手の感触が気になった。

俺は、タカシの腕だと思って握っていたものを確かめようと手のひらを見下ろした。

そこには何かが握られていた。それはタカシの腕ではなく―― 干からびた何かだった。

細長くて黒ずみ、骨がむき出しのようなそれは、まるで動物のミイラ化した腕のように見えた。細かい毛のようなものが所々にこびりつき、湿った臭いが鼻を突く。俺は思わず手を放し、後ずさりした。

その腕は、まるで生き物のように床に落ちた瞬間、不自然にカタカタと動き出した。乾いた音を立てながら部屋の奥へ転がり、影の中に消えていく。

「な、なんだよあれ……?」俺は震えながら目の前のタカシを見たが、タカシは何も知らないという顔でお菓子を頬張り、「どうしたんだよ、変な顔して」と言うだけだった。

俺はその日から、2階の押し入れはもちろんのこと、田舎の祖父母の家自体が怖くて仕方なくなった。いったい俺があの時握っていたのは何だったのだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました