2024-11

ほっこり

想いの形

気がついたら、私は歩道に横たわっている自分を、見つめていた。目の前には私を見つめる幼い息子の泣き顔。救急車のサイレン、周囲のざわめきが遠くで聞こえる。 「ママ!起きて!ママ!」 その声が届いても、横たわっている本来の私の体は動かなかった。ど...
怖い話

異世界体験

きっかけは、学校での些細な出来事だった。 ここ数週間、私はどこか空虚だった。親友だと思っていた子が私を避け始め、グループの中での居場所がなくなったような気がしていた。学校では笑顔を作って過ごしていたけど、家に帰るとその疲れが一気に押し寄せる...
怖い話

あかぐろなるもの

ある年の夏、僕は仕事の疲れを癒すため、一人で田舎の古民家に泊まることにした。都市部の喧騒から離れて、静かな時間を過ごそうと思ったのだ。インターネットで見つけたその古民家は、山奥の小さな村にあり、築100年以上の歴史があるという。非日常的な空...
怖い話

階段のおじさん

私には、物心つくかつかないかの小さい頃の記憶がある。鮮明というわけではないけど、その光景はずっと頭に残っている。 当時住んでいた家は、ごく普通の一戸建てだった。玄関を入ってすぐ2階まで階段が伸びていて、木の板張りのどこにでもあるような階段だ...
怖い話

真夜中の窓

夜中の2時過ぎ。家族は全員寝ていて、リビングはしんと静まり返っている。俺はソファに横になり、スマホをいじっていた。薄暗い部屋の中は時計の針の音だけが響いている。 ふと、視線を感じて顔を上げた。リビングの大きな窓が目に入る。普段なら夜になると...
怖い話

にょきりさん

子どもの頃、拓海の地元では「にょきりさん」という謎めいた存在が有名だった。学校帰りの通学路、電柱のすぐそばに、いつも奇妙な姿をした人影が立っている。遠目には人間らしさを感じるのだが、近づこうとする勇気は誰にもなかった。手足と首が異常に長く、...
怖い話

偽物みつけた

俺がまだ小学4年生だった頃の話だ。夏休みになると、俺たち家族は毎年田舎の祖父母の家に遊びに行っていた。古いけれど広々とした木造の家で、周りは山や川に囲まれていた。俺たち子供にとっては、都会の窮屈な家とは違って自由の象徴みたいな場所だった。 ...
怖い話

見ているアプリ

最初にそれを見つけたのは、仕事が終わって家でソファに倒れ込んだときだった。 スマホのアプリ欄の中に、見覚えのないものがある事に気付いた。監視カメラのようなアイコンで、レンズ部分が赤く光っている。名前は書かれていない。いつから入っていたのか検...
怖い話

配信の果て

小さな部屋。壁には自分で貼り付けた防音材が張り巡らされ、机の上には中古で買ったPCとマイク。俺はこの狭い空間で、数人の固定視聴者に向けて毎日ゲーム実況を続けている。夢は、有名配信者になること。でも現実は厳しい。再生数が二桁いくことなんて滅多...
怖い話

遅れる鏡

鏡の違和感に気づいたのは、ほんの些細な瞬間だった。鏡の中の「私」が、ほんの少し遅れて動いているように見えた。それは一度気になりだすと、どうしても目を離せなくなる類の感覚だった。 その鏡は先週フリーマーケットで手に入れた、彫刻が施されたアンテ...